壊れかけた心

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放課後。花音と香代子と合流し、4人で廊下を歩き始めた。 「茉莉亜、そういえば今度の日曜大会だよね?応援してるよっ!」 香代子が満面の笑みで言った。香代子も幼稚園からの幼馴染。特に香代子と茉莉亜は同じマンションに住んでるから、ずっと一緒に過ごしてたみたい。 「ありがと~って、香代子まだ1回も大会見に来たことないけどね。」 「え〜?そうだっけ?」 も~と、茉莉亜が笑うと、香代子もごめんごめんと笑いながら謝った。花音は二人の会話を聞いて笑ってる。 いつもの光景。 いつもと変わらないこの感じに私は安心して話を聞いていた。 校舎をでて、茉莉亜はテニス部、花音は吹奏楽部に向かった。私は香代子と同じ美術部なので、今日は部活せずに帰ることにした。 香代子とは、3人の中ではあまり喋ることがない。同じ部活だけど、それはたまたまお互い絵を描くことが好きだっただけで、意図して同じにしたわけじゃなかった。 なんか、ちょっと気まずい...。 学校をでると、香代子の方から話しかけてきた。 「ねぇ理科の班、樹くんと同じ班になったって、本当?」 「え?あぁ、うん。」 いつの間に知ったんだろう。 理科の席替えは今日の1時間目にあって、その情報を香代子が知ってるのは不思議ではないけど、早すぎるんじゃないかなって思った。 「やっぱそうなんだ~。じゃあさ、来週の日曜日、空いてるか聞いてくれない?」 「えぇっ?なんで私なの?」 瀬戸島くんに予定を聞くなら、茉莉亜の方が仲がいいしいいんじゃないかな。 そう思ってると、香代子もそれは思っていたみたいで、私の顔をみて苦笑した。 「まぁ、茉莉亜が聞くのが一番早いのはわかってるんだけどさぁ。来週って茉莉亜の誕生日でしょ?」 そうだ、来週は茉莉亜の誕生日。確か...あ、ちょうど日曜日か。 もしかして...と思い、香代子を見ると香代子はにこっと笑った。 「じゃ、とわ、お願いね!」 「うぅ...。」 私じゃ荷が重いよ...。瀬戸島くんと、まだ片手の数ぐらいしかちゃんと喋ったことないのに。 いきなり来週の予定を聞くのは難易度が高すぎる。 そのことを考えながら歩いていると、気がついたら家の前まで来ていた。 鍵をあけ、中に入る。 「ただいま...」 おかえりなさい、と返事が返ってくるわけでもなく。私は洗面台で手を洗うと、自分の部屋に入った。相変わらず音のしない家の中で、ひたすら無言の時間が過ぎていく。 これなら、まだ学校にいてみんなの話を聞いておく方が、同じ無言でもいい。そう何度も思った。 私の両親は仕事が忙しい、らしい。 らしい、と言うのは、その確証がないから。本人たちが忙しいと言ってるんだから忙しいんだろうけど、私はあまりその言葉が信じられないでいた。 私が5歳の時に両親が離婚して、私は父に引き取られた。それから、私が9歳のときに父が再婚。今に至る。 別に、私は父が信じられないわけじゃない。今まで、長い時間私といたのは紛れもなく父で、再婚するまでの期間だって、私にちゃんと愛情を注いでくれたと思う。
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