壊れかけた心

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でも、父が再婚して半年ぐらいたってから、急に仕事が忙しくなって、家を開けることが増えた。そのときは何も思わなかったけど、父が家にいないということは、必然的に私は『新しいお母さん』と家の中で二人きりということになる。 ちょうどそのとき、私は小学3年生で、『新しいお母さん』にどうやって甘えればいいのか全然わからなかった。たぶん、お母さんは私に歩み寄ろうとしてくれてたんだろうけど、私は自分の部屋に引きこもってた。 『とわちゃん、ケーキ食べない?お父さんが昨日買ってきてくれたの。』 『ううん。大丈夫。』 『...そう。食べたくなったら言ってね。』 私はそこから逃げるように立ち去った。 今思うと、こういうのがいけなかったんだろうな。段々お母さんは、私に話しかけなくなった。それから、お母さんは父との間に子供が出来て、家の中でじっとしていることが多くなった。 私は必然的に家事をしなければならなくなった。 家事は嫌いじゃなかったし、むしろやればやるほど上達していくことに達成感を覚えるくらいだった。 でも、それでも私たちの間に会話はなかった。 私は淡々と家事をこなし、お母さんはお母さんの役割を果たしていた。 あぁ、でも、一度だけあったな。 お母さんが妊娠してから、初めて家族三人揃って夕食をとった日。私の父がお風呂に入っている間に確かこう言われた。 『ねぇ、とわちゃん。あなた、私のこと嫌いでしょ』 私はなんでお母さんがそう言うのか分からなかったから、何も言わなかった。そしたら、それを肯定と受け取ったのか、お母さんが言った。 『まぁ別にいいけど。これからは顔を合わせる機会も減るしね。』 え?と思った。 これから会う機会が減るってどういう意味?お父さんと別れるってこと? お母さんの言葉の意味が聞けずに父がお風呂から上がってきてしまった。
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