一人の乗客

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一人の乗客

足音が消えたと思えば、隣から優しい香りがする。 ‥まさか。 チラっと横を見ると女性が座っている。 誰も乗ってないのに、なんで俺の隣に!? 白いワンピースに長い髪。 俺と同じくらいの年齢ぐらいだろうか。 いや、年齢を推測するのは失礼か。 「‥‥‥」 見入ってしまったのか。 いつの間にか女性と目が合っていた。 「‥はっ!」 慌てて外へ視線を変えた。 相変わらず雨が降りそうな曇り空。 女性に変な人と思われてないだろうか。 うぬぬぬ‥。 なんで隣に‥。 電車の扉が閉まる音。 車両がゆっくり揺れ、次の駅へ向かって動き出す。 隣の女性が気になってしまうから目を閉じておこう。 電車のガタンゴトン音と揺れが心地いい。 揺り篭のような‥。 このまま少し寝てしまおうか。 降りる駅まで、まだ数駅ある。 寝過ごさないように気をつけないとな。
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