memory umbrella

---5年後---
学生時代は終わり社会人1年目。
私は今ウエディングドレスを見ていた。
結婚式の演出で傘を使いたいと言うと、新郎は照れくさそうな顔をして、
「僕もそうしたかったんだ。」
と言った。
結婚式の当日。
式の最中はあの日のような強い雨が降っていた。
式が終わり、大階段から降りる時にはほとんど雨も止み、ほんの少しだけ、雨が残っていた。
新郎は笑いながら、
「あの日みたいな日だね」
と、嬉しそうだった。
大きな傘を1本さし、2人で入って大階段をゆっくり降りる。
来てくれた人達にも2人で大きな傘を1本さして入ってもらった。
みんなの笑顔と
「おめでとう！幸せになりなよ！」
という言葉に囲まれて、大階段を降りきると、測っていたかのように雨がやみ、虹がでた。
「おぉ-!!」
みんなが声を揃えて言った。
傘を閉じたふたりは肩を寄せ合い、虹を見つめた。
あの日、傘を2本持っていることを使えなくてよかった。彼が最後まで私の言葉を聞かなくてよかった。
私は雨が大嫌いだけど、彼と居る時は雨が大好きです。
私達は今、幸せです。