memory umbrella

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文化祭の準備期間のお話。 今日は晴れのち雨。あまり、天気予報を見ない彼には少し先を読むのが難しい天気だった。 私の家では毎日お父さんが家を出る前に、今日は日差しが強すぎるから日焼け止めを塗っていけとか、暑すぎるからタオルを持っていけとか色々教えてくれる。 そのおかげで、私の家族は天気に何か焦らされることなく、毎日困った顔をせずに帰って来れている。 文化祭の準備もいよいよラストスパートという日にそんな天気になった。文化祭の準備中に雨が止んでくれることを彼は、祈ったが、その祈りも虚しく、雨はますます勢いを増すばかりだ。 靴箱で困った顔をして、諦めて濡れて帰ろうとしていた彼を私は意を決して呼び止めた。 「ねぇ!傘無いの?」 振り返った彼は、少し驚いた顔をして、その後眉を下げて笑いながら、 「学校に来る時は雨が降ってなかったからね」 と、言った。 「私傘もってるの!だから...!」 傘を2本持っていることを仕えようとしたそのセリフを彼は遮って 「まじ?!じゃあ俺入れてくんない?」 助かったーと、言わんばかりに笑顔で彼はこちらに歩いてきた。 実は私はいつもバックに折り畳み傘を1本入れていたのだが、それを知らない彼は、2人で1本の傘に入ろうと言ってきたのだ。 いつも優しく接してくれる彼が気になっていた私は、2本あることをあえて言わず、その日は2人で1本の傘に入って帰った。 お互いがお互いに濡れないよう、譲り合って、傘に入っていたから二人とも肩が半分濡れてしまった。 だけど、そこには間違いなく幸せそうなふたつの笑顔があった。
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