新宮真

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新宮真

 近年、自殺増加に政府は悩まされていた。労働人口の減少、自殺対策費の増額、国営の不安定化と挙げればきりがないほどの問題に政府はある解決策を打ち出すこととなった。  それが「安楽死法」。政府は死を求める国民に安楽死を認めることにした。政府により安楽死を求める者には役人が派遣され適切に執行されることが出来る。その法律を最初は誰もが気味悪がり、安楽死を選ぼうものなら異郷の者として扱われた。しかしそれも束の間、安楽死は思ったよりも早く世間に浸透していった。もともと自殺が増加している現在では安楽死を求める者は少なからずいた。一人が選べば、二人目が続く。そのうち堰が外れたかのように多くの人が死を選ぶようになった。そんな世の中で安楽死を与える役人は尊敬と軽蔑の意味を込めてこう呼ばれるようになった。  真っ黒のスーツと黒いネクタイに身を包み死を求める者に死をもたらす「黒服」と。
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