新宮真

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 「私の夢は人の役に立つことです。どんな些細なことでもいいから誰かのために生きる人生を歩みたいのです。そして、私が死ぬときに誰かが私のために涙を流してくれる、私のことを思ってくれる、私のことを憶えていてくれるそんな人でありたいのです。人は助け合いで生きていると聞きました。支え合って生きていると。誰も一人では生きられないのだと。  私には助けてくれる人が、支えてくれる人が、生かしてくれる人がいるのでしょうか。そんなことを考えていると夜も眠れないほど不安になります。  お母さんは私のために涙を流してくれるでしょうか、お父さんは私のことを思ってくれるでしょうか、弟は私のことを憶えていてくれるでしょうか。それが分からないのです。私はお母さんに酷いことを言いました、お父さんを無視しました、弟とケンカをしました。家族の役にも立てない私が生きていてよいのか、生きているのか分からないのです。」  「くだらない悩みですね。思春期にありがちなどうでもいいことばかり考えて、どうでもいいことにばかり労を割く。」  真が話の途中で割って口を出す。  「どうされたんですか?」  黒服はすっとぼけたような声で真が口を出した理由を言及する。  「暇つぶしですよ。どうせなら、過去の自分を完全否定するんです。今の自分の選択が正しいってね。現世の未練を断つことが目的なら何の問題もないでしょう?」
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