新宮真

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 「そうですね。それも一つの遺品の整理です。いつでも口をはさんでいただいて結構ですよ。」  黒服はそうなることが分かっていたように自慢げな薄ら笑いを浮かべて答えた。真にはそれが黒服の表情を見なくても分かるようだった。  黒服が手紙の続きに戻る。  「そこで、私はとにかく誰かのために生きるということを決めました。私が生きていていい理由を獲得するために、生きていると証明するために。  それでも、誰かのためというのは難しいです。家族のために行動しようとしても上手くいきません。お母さんのために洗濯をしてもそのうち半分は私が使う衣服で、お父さんのために肩を叩いても家族のために肩を凝らして働いていて、弟のために見たいテレビ番組を譲っても次の日には私が弟に譲れらていて、家族のためにやることは私のためにやることに取って代わる。  どうすれば私は誰かのために生きているということができるでしょうか。」  フゥーと息が漏れる音が鳴る。真が口を開く。  「どうしてそこまで人のために生きようとしているんだか。人は一人でしか生きられない。どこまでいっても一人。他人は他人、自分は自分でしかない。なんでそんな単純なことにも気づかないんだろう。」  「そうですか?少なくとも私たちは関わってお互いに手を貸し合って、新宮様と私の未来へと進んでいると思いますが。」
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