新宮真

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 真は一度深く深呼吸をすると、いつもの声と平坦なテンポで黒服に告げた。  「もうさっさと最後まで読みきってしまってください。それでこの話はおしまいです。仕分けだってあと少しで終わりますし。」  黒服は頷き答える。  「分かりました。それでは続きを読ませていただきます。」  黒服も真と同じく一度深呼吸をして、ゆっくり続きを読み始めた。  「正直、今の私にはその方法が分かりません。だから、10年後の私にはそれを見つけて私に教えて欲しいのです。もちろん、1年後の私にも2年後の私にも。いつまでも考え続けていこうと思います。きっといつの日かその答えが分かって、私に教えてくれる時がくるだろうとそう信じてこの手紙を残します。  10年前の私より 新宮真。」  黒服は自分の声の反響音を、10年前の新宮真からの手紙を噛みしめるように少しの間をおいた。真にはとても長い時間に感じた。  「以上で手紙は終わりです。」  黒服がそう告げると、真が答える。  「そうですか。…やっぱり馬鹿な子供の夢にしか思えません。実現できるはずもない夢を描いて、妄想に花を咲かせる。現実に打ち砕かれるのが目に見える。」  ここまで続いていた会話が途切た。真の目に生気はなく、ただただ空虚な時間が流れる。
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