第九章

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「伏せよ、グラビティ」  少女の一言でエコーは膝から崩れた。まるで彼女の立つ場所だけが巨人に乗られたかのように重くなり、ついには体勢を崩し、地面を砕きながら埋もれていく。 「エコー! こ、この野郎!」 「野郎ではない………呼ぶのならば小娘だ」  態勢を立て直したタイサは上下で挟み込むように杭を打つ。猛獣の牙に匹敵する一撃はアスタロッテの上半身を狙った。 「あれに耐えたか………さすがは黒の剣に選ばれるだけはある」  そう見上げるアスタロッテはタイサの杭で貫かれる。  少女は黒い霧となって霧散した。 「残像じゃ………いや、正確には魔力で作った幻影(デコイ)か?」  アスタロッテはタイサの左隣に立っていた。 そして黒の扇子をタイサのこめかみ当てる。 「バーン」  直接頭に八頸を叩き込まれた。  タイサは口を開けたまま、大きな音を立てて横に倒れる。 「何じゃ、つまらぬ………」  扇を広げ、アスタロッテは口元を隠しながら眉をひそめると、大きな欠伸をしながら踵を返してその場から離れ始める。 「所詮は人か………やはりこの世界は我らが治めるべきじゃな」  領主の椅子に向かうアスタロッテ。  その少女の頭の上に何かが降ってきた。 「石? 天井か?」  見上げた瞬間、天井が大きく崩れ落ち、そこから巨大な鉄球がアスタロッテめがけて落下してきた。 「どんぴしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」  さらに鉄球から離れるように紫色の髪をもつ女性が倒れるタイサの傍に飛び降りる。 「先輩! 時間を、とにかく時間を稼いでください!」  ボーマとバイオレットだった。
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