第九章

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「人間だと侮っていたことは素直に詫びよう。其方達は十分に強い………望むのならば77柱に迎え入れてもよいくらいじゃ」  アスタロッテが元の位置に戻ろうと歩き始める。子どもゆえに小さな歩幅であったが、その1歩1歩が強者としての余裕と頂点に立つものとしての優雅さを兼ね備えていた。 「諦めよ。それでも我には勝てぬ」  再び少女の右手に黒い粒子が集まり、闇の扇子が作り出される。 「………だ、そうです隊長。いっそのこと、転職してみますか? 冒険者よりも待遇は良さそうですが」 「参ったな。そう聞かされると元貧乏人としては揺さぶられるものがあるな」  肩を鳴らし、タイサは爪先を床に叩きながら体の関節を慣らし始める。 「だが、却下だ。借金は一応返したが、貧乏人には貧乏人なりの意地がある」「了解です」  タイサとエコーが武器を構えた。 「あくまで吾と戦うか………ならば仕方あるまいて」  アスタロッテは小さな口で息を吸い込むとその力を解放させる。彼女の周囲には黒い波動が二重三重と発生し、足元の小石が振動し、ついには黒い粒子となって波動の一部と化す。 「今度はこちらから行くぞ? 是非耐えて欲しいものじゃ」 「面白い。その小さな体で………くっ」  タイサが言い終わる前に、アスタロッテはタイサの胸の前に迫っていた。 「この動きは!」「ほら、耐えてみせよ」  アスタロッテの右肩がタイサの胸当てに寄りかかるように小さく当たる。  瞬間、タイサの胸当てと背後の装甲が粉々に吹き飛んだ。 「がはぁぁっ! は、八頸だとぉ!?」  彼女から送られた魔力が体中で跳ね返り、暴走しながら後背へと突き抜ける。 「隊長!?」  エコーがすぐさまタイサの体の隙間を縫うようにアスタロッテへ連続付きを放つ。  だが、エコーの突きは六角形の障壁が次々と先手を打って現れ、アスタロッテへの道を阻む。
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