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   窓から入り込む朝日に体を温められ、タイサは目を覚ます。  体を起こすと白いシーツが落ちた。タイサは広いベッドの左隣に手を置くが、嗅ぎ慣れた匂いは残っていたものの既に温もりはない。 「ふむ………」  まだ頭が目覚め切っていない。タイサは大きな欠伸と同時に汗ばんだ頭を掻くと、ゆっくりと立ち上がり窓に向かって背筋を伸ばした。  窓からは涼しい風がレースのカーテンを揺らしながら入ってくる。既に冬は終わり、僅かに流れてくる花の香りが春の到来を告げていた。 「おはよう、エコー」  木製の階段を降り、タイサは台所から出て来たエコーに声をかけた。褐色の肩を見せる薄着のままエプロンを羽織る姿も随分と見慣れ、体を冷やすなとも言わなくなっていた。  結婚後、エコーは妊娠し、騎士団の副長の任を降りてからというものの今では立派な専業主婦を務めている。もともときっちりした性格のため、家事全般に問題はなく、最近ではデルの家で新しい料理を教わっているらしい。 「おはようございます、隊長」  相変わらず家でもこの調子である。  家の中くらいとタイサも呆れていたが、今では慣れた呼び方の方が性に合い始めていた。  タイサは食卓に料理が並ぶまでの間に、顔を洗うために洗面所に向かう。 「そういえば、今日でしたね」「んあ?」  遠くから聞こえてくるエコーの声に、タイサは顔が濡れたまま変な声を上げる。 「結成式ですよ。ほら魔王軍と王国騎士団の混成部隊の」  フライパンを持ったまま、エコーが上半身をタイサのいる洗面所に乗り出す。 「ああ………ようやくここまで来たって感じだな」  手探りでタオルを探し、タイサは左手に触れたタオルを顔に付ける。  随分と湿っぽく、しかも嗅ぎ慣れた自分の体と同じ匂いがした。 「隊長、それ昨日のタオルですから」「………何で見ていないのに分かるんだ」  声だけが聞こえてくる。タイサは目を開けてから新しいタオルを引き出しから出すと、改めて顔を洗い直した。 「新しいタオルに交換する仕事は、誰の担当でしたっけ?」 「ぐむむ」  何も言えなかった。
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