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「あ、お父さん。おはよーございまーす」  家を出ると、すぐ隣の教会ではイリーナが孤児達と一緒に朝の掃除を行っていた。  人間と魔物との戦いで、多くの孤児を出していた王国は王都北部の区画整備を行い、そこで貧しい者や家を失った者、孤児達を受け入れる施設を大量に用意することになった。  この大区画整備は多くの需要を生み出し、また出稼ぎ労働者や職を失った者達の受け入れも兼ねており、その人の流動がさらに近隣の飲食、宿泊業の刺激に繋がったため、結果として区画整備に要した大量の資金を税金という形で回収することができた。  新国王リリア女王の歴史に残る大事業と改革であった。 「まったく、また遅刻? そのうちまたクビになるわね」  教会から真紅の神官服を着たフォースィが現れる。彼女もまたリリア王女の要請を受け、孤児達の面倒と、周辺教会との窓口としての依頼を受けていた。  その報酬が、あの朽ちかけた教会の立て直しと要求するのだから、中々の弁舌者である。今では司教となったマリアと共に、多くの教会関係者を呼び集めて多くの傷付いた者達の世話をしている。 「悪いが、今日は遅刻にはならん。残念だったな」 「あらそう? 今日は朝早くから結団式の打ち合わせがあるって聞いたから、てっきり遅れたあなたをバイオレットが迎えに来たのだと思ったのだけれど?」  フォースィがバイオレットの方に視線を送る。 「………バイオレット?」  タイサは鉄が擦れるように彼女の顔を見る。 「………どうですか? 女性らしかったでしょうか?」  バイオレットは自分の頭を小突き、舌を出していた。  その瞬間、タイサはバイオレットを脇に担いで全速力で王城に向けて駈け出した。
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