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 彼もまた極刑確実な男であったが、女王陛下の言葉と寛大な処遇に感銘を受け、改めて王室に忠誠を誓い、もって裁判は事実上永久に延期とされている。  イーチャウは貴族としての地位と多くの財産を失いつつも、その弁舌と商才、さらにこれまでの有力者との繋がりを最大限に利用して、大きな被害を受けたブレイダスとゲンテの街の復興に力を注いでいた。そしてクライルと同様、昨年から金竜騎士団の団長として職務に復帰するに至っている。  噂では魔物達との取引も既に始めているらしく、物々交換ではあるが多くのタネガシマの流通を抑えているとの噂があるのは実に彼らしい抜け目のなさである。恐らく事実であろう。彼の財産が昔以上になるのも遠い日の事ではない。  会議室の顔ぶれもこの2年で随分と変わっている。銀龍騎士団の団長には老騎士フェルラントが、女王陛下の進言を受けつつも責任を取って引退した青獅騎士団の団長にはデルを補佐し続けたシリアが団長となり、この会議室の席についている。  デルの副官を務めていたバルデックも昨年騎士団『牙』の団長となり、1年経っても未だ緊張でお腹が緩くなるらしい。前団長のジュールは元傭兵らしく、稼ぎが良い方にと戦後処理を済ませてからすぐに団長職を辞して東部に向かった。風の噂では魔王軍と接触し、77柱に迎え入れられたそうで、これもまた抜け目がない。  元騎士総長でもあり、白凰騎士団の団長だったシーダイン亡き後は、魔王軍との戦いで重傷を負ったベルフォールがその任に就いた。騎士団を撤退させる中で殿を務め、重症の中で生き残った彼は、相変わらず傲慢な部分はあるものの、少しずつだが平民にも耳を貸すようになっていた。  何より彼を騎士団長に推薦したのがデルだったことが大きかった。本来ならば騎士総長が白凰騎士団を率いるのが通例だったが、デルは騎士総長を独立させたのである。
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