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「………聖教騎士団」
デルが苦虫を潰した表情で歯を噛み合わせた。
聖教騎士団。イリーナと同じ騎士団の所属だが、本来の任務は罪を犯した人間や魔物を断罪する教会が作り上げた専門の騎士団である。犯罪者、蛮族という肩書があるだけで、それは断罪されるべき対象と教え込まれている。
そして白髪の少年少女という姿はイリーナと同じ境遇の子ども達という事を意味する。
「隣国の危機だからって神父様からの要請を受けたから、最短距離で予定の場所に向かう途中だったけど」
長髪の少年がオセとデル、アモンを一瞥して首を傾げた。
「人間もいるけど僕たちの敵ってことで良いのかなぁ?」と前髪の少年。
「良いんでしょ? 蛮族と一緒にいるんだもん」
少女は手を合わせて音を鳴らすと、2人の意見をまとめた。
「こ、この糞ガキどもがぁ!」
オセが斧を強く握ると、立ち上がりと同時に振り返り、腕を伸ばして斧を振り上げる。
振り上げた斧は長髪の少年に向かって地面に叩き付けられた。
「………へぇ、凄いや。まだこれだけ動けるなんて」
少年はオセの渾身の一撃、燃え盛る斧の一振りを籠手越しとはいえ素手で受け止める。
「力も中々。お姉さん………今までで僕が殺してきた魔物の中で一番強いかもしれない」
オセが斧を引こうとするも、少年が掴んだ斧は動かなかった。
オセは覚悟を決める。
「アモン! デル! お前達はさっさと扉に入りやがれ!」「「何言って………がはぁ!」」
血を吐き続けるオセが、デルとアモンを立て続けに蹴り、無理矢理門の中へと放り込む。
そして門は何かの意思に従うように、ゆっくりと閉まり出した。
「オセ!」
デルは急いで立ち上がり、既に隙間が半分になっていた門の前でオセの後姿を睨む。
「………済まねぇが。姉さんには上手くいっておいてくれ」
オセが門の奥で立ったままのアモンに一度だけ視線を送ると、アモンは下唇を噛みしめながら目を静かに瞑り、小さく頷いた。
「分かった………思いっきり暴れて来い」
「おうよ。俺を誰だと思ってやがる………」
オセの言葉を閉じるように左右の扉が合わさる。
そして扉の奥から強い衝撃が加わり、門は大きな音を立てて砕け散った。
「馬鹿野郎が………」
扉の破片は、始めからそこになかったかのように粉となり、空気中に拡散する。
デルは扉のあった場所で立ちつくしていた。
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