第三章

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 アイナ王女を筆頭に、その左右で立つデルとバイオレット。バイオレットはシドリーから少し離れた場所で座っているタイサとエコーを何度も気にしている。  デルの背後では集落で帰りを待っていたフェルラントとバルデックの2名が立っている。シエンは集落に集まった騎士団の再編のためにこの場には参加していなかった。また、フォースィやイリーナも自分には関係がないと参加を拒み、この場にはいない。  デルは対岸に座るシドリー達を見つめた。  魔王軍からは司令官のシドリーが座り、その左右に狼男のアモンと銀色の人工生命体のバルバトスが立っていた。他にも幹部がいるとシドリーは自己紹介の際に言っていたが、王国側と同様に洞窟内で部隊の再編を行っているのだという。  『大魔王』と呼ばれた者は見当たらなかった。  そして魔王と呼ばれて座っている男がもう1人。  デルは同期の親友に視線を向けて目を細めると、すぐに視線を戻した。 「我々は貴族派と、あなた方は新生派の魔王軍と決着をつけるために、ですね」  王女達にとっては魔王軍の戦力をもって貴族派と対抗することができる。シドリー率いる魔王派にとっては戦力の補充という意味合いよりも、少数であれ邪魔をする集団が1つなくなること、そして王国側の情報が入手でき、さらに戦後における王国と魔王軍との交渉の場で有利な立場をつくれることを利点としていた。  どちら側にとっても、手を結ぶ意味合いは十分にある。それをこの場にいる全員が確認できた。  アイナ王女は、魔王軍側ではあるがシドリーから少し離れた場所で静かに座っているタイサ、その傍で立つエコーに目を向ける。そして小さく口を開けて一言を発しようとしたが、何かで思いとどまると口を閉じ、再びシドリーに顔を戻した。 「分かりました。同盟と共闘、改めて結ばせてもらいます」 「理解してもらい、感謝する」  アイナ王女とシドリーは示し合わせたかのように立ち上がり、お互いに近付いて握手を交わす。 「………オセ殿は貴方の妹だと聞きました。私自身もその戦場にいましたが、とても勇敢な方でした」 「ありがとうございます。愚妹ではありましたが、今回の任務を果たすことができ、姉としても誇りに思っています」  シドリーの表情が僅かに柔らかくなり、王女に笑みを見せる。
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