第三章

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「最低でも5人か」  魔王軍を内部分裂に追い込めるほどの実力者。ただでさえ77柱には1人で戦況を覆せるだけの能力を持った猛者ばかりだっただけに、一度でも戦ったことがある者達にとってはその強さを正確に想像できる者はいなかった。 「ですが、逆に言えば目標はこの5人だけです。組織の仕組みから決定権をもつ者がいなくなれば、組織はまとまりを失って勝手に瓦解するでしょう。中立派も新生派の言葉を聞く理由もなくなり、軍勢は霧散します」  一万を超える魔物達よりも幹部5人と戦うことを念頭に入れておくべきだと、アイナ王女が発言した。 「そうなれば最終的な戦いは、いかに5人とだけ戦える戦場を設定できるか、ということになるな」  デルが机を指で弾きながら広げたままの地図を眺める。 「何はともあれ、最初の戦い次第だ」  タイサが今はそれ以上考えても仕方がないと肩をすくめた。  そして手を2度叩く。 「それでは出発は明日の正午。すでに大魔王配下のケリケラがここを出発し、我々が待機する場所に魔方陣を描きに向かっている。準備ができ次第、大魔王の空間転移で全戦力を一気に飛ばしてもらう予定だ」  タイサが遠くで座る大魔王に視線を向ける。 「………そう心配せずとも何も問題はない。だが、この移動方法は魔方陣を描く際の隙が大きい。お前達からすればどこにでも移動できる奇跡のような魔法に思えるのだろうが、使えるのはこの1回のみだと思った方が良い」  2度は使わない。明確にはしなかったが、大魔王の言葉にはその意味が込められていた。  タイサは長机の周囲に集まる仲間に顔を向け直し、1人小さく頷く。 「各自、最後の準備にかかってくれ」  会議は解散となった。
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