第四章

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「………どっちが蛮族なんだか、分からなくなるわね」  デルからは聖教騎士団の3人は共に話し合い、意見を共有していたと聞いている。フォースィは少なくとも以前の計画から改善された次世代の使徒計画の子ども達なのだろうと予測する。 「………イリーナ。あなたはどうしたい?」  使い終わった櫛をテーブルの上に置くと、フォースィはテーブルに置いてあったガラス瓶からやや茶色に濁った透明な液体を掌に取り出し、それを両手で擦り合わせてからイリーナの髪に広げるように塗る。 「………話をしてみようと思います。一応、私の妹や弟ってことなんですよね?」 「まぁ、そういう表現は………できなくはないわね」  液体を少し取り出しては手の平で擦り、髪に塗る。白い髪は染まらないが、塗られたところは照明に当たって艶がかかり、僅かに蜂蜜のような甘い匂いが香り始める。 「でも、話を聞いてくれるかしら」フォースィが疑問を投げかける。  改善されたという事は、教会にとって使いやすい駒になっている事と同じ意味をもつ。例え同じ計画から生まれた存在同士とはいえ、耳を傾けてくれるだろうか。フォースィは言葉にはしなかったが、不安の方が強かった。 「大丈夫ですよお師匠様。もしも駄目だったら私が殺しますから」  イリーナの何気なく出た恐ろしい言葉に、フォースィの手が一瞬止まる。 「………そう。そこまで考えてあるなら、貴方の好きにしなさい」 「はい。お師匠様」  フォースィはそれ以上言うことはできなかった。 「あ、でも止めはシドリーさんに譲った方が良いですか? だったら最初から譲った方が? んんん?」  物騒な考えをまるでお使いのように口に出すと思えば、イリーナは時折相手を重んじる言葉も同じように出すようになっていた。 「お師匠様ぁ、どうしましょう」  そして考えがまとまらずに保護者でもあるフォースィに泣きついてくる。  フォースィは複雑な気持ちを表情に出さずに飲み込み、綺麗に整えられたイリーナの髪を無言で撫でた。
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