第四章

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「よし、もう俺達にできることはもうない。皆にはもう休むように伝えてくれ」  村の地下。隠し部屋から繋がる洞窟の中で、ボーマは2体のオークに向かって指示を出すと、オークは目を潤ませてボーマの腕に抱きついてくる。 「おいおい、俺にはまだ仕事が残っているんだ………え、何、部屋で待っているって? いやぁ、困ったなぁ。わはははは!」  鼻の下を伸ばしながらボーマが高笑いする。オークは人の言葉を話していないはずだったが、ボーマとは意思の疎通ができているようだった。 「………ボーマさん」 「おっと、君もかい? じゃぁしょうがな………ってかかかかかか、カエデちゃん!?」  ボーマが振り向いた先にはカエデと一緒についてきたジャックが、白い目でボーマを見つめながら立っていた。 「うわ………本当にオークに好かれてる。ボーマ、おめでとう」ジャックは本能的に後ずさる。 「うるさいです。元副長」  ボーマは慌ててオークの腕から離れると、額から流れる汗を肩の服で拭き上げ、何事もなかったかのように真剣な表情をつくり出す。 「いやぁ、カエデちゃん。どうかしたかい?」 「………い、いえ。何から話せば良いか忘れてしまいました………」  カエデも自分の額に拳を当てて、気持ちを落ち着かせる。  ボーマは腰に手を当てて大きく息を吐くと、オーク達を掌で退散させて環境を整えた。 「表情が暗いよ? 何があったか分からないけど、まずは落ち着いて………思いついた言葉から出してごらん」 「ボーマきもい」「だーかーら、お前さんは黙ってろぃ。一応、元副長でも俺の方が先輩なんですからね?」  代弁するかのようにジャックはカエデの後ろから口の横に手を当てて声を高くして呟く。 「………分かりました、ありがとうございます」  カエデも大きく息を吸い、自分の頬を挟むように両手で顔を揉む。 「とりあえず、思ったことから吐いてみますね」 「そうそう、遠慮なく吐いてごらん………はぃはぃ、そこの子どもオッサンは口を閉じてねー」  今更気遣う必要はないと、ボーマが眉をひそめて手をカエデに向けて動かす。カエデも彼の気持ちを汲み取り『では』と口を開いた。
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