第四章

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「そういう意味では、俺達は隊長の人柄に随分と甘えていたんですかねぇ」  ボーマが呟いた。 「見方を変えればそうと言えるかもしれないけど、隊長もそこまで気にしていないと思いますよ?」  ジャックが足元の小さな石を軽く蹴る。 「今じゃぁ、魔王軍と王国の未来の2つを抱えているんだから………おかしな話になったもんですよ」  ボーマが視線を下げてカエデに向けた。 「今すぐに結論を出す必要はないんじゃないかな? きつい言い方かもしれないけど、割り切らずに明日も悩んだままだと、カエデちゃん………死ぬよ?」 「おい、ボーマ」  さすがに、とジャックが壁から離れてボーマに体を向ける。 「いえ、いいんです………それはもちろん、分かっています」  カエデは自分の胸に2度、そして額を二度拳で軽く小突くと、大きく息を天井に向けて吐いた。 「私がだらしのない兄貴の面倒を見ていたとばかり思っていたのですが、一緒に冒険していくにしたがって、どうやら私は兄貴に頼りっきりだったんだとようやく気付きました」  適当でだらしがなさそうに見えて、見ている所はきちんと見ており、何気ない冗談も周囲の雰囲気を感じての素振りだったのだとカエデは、自分の兄の懐の深さを初めて気付かされた。 「いや、カエデちゃん。隊長を褒めるのはいいんだけれど、あれは本能だよ」「僕もそう思うね」  兄の素晴らしさに感動している中、ボーマが横やりを入れ、ジャックもそれに深く頷いている。 「だからカエデちゃんは必要以上に気にする必要はない! 以上終わり!」  ボーマがそれ以上考えても仕方がないと、肩をすくめて冗談で話を終えた。 「さぁ、将来のことも何もかもはこの戦いが終わってから。俺達は俺達でできることをやっていきましょうや」 「何だったら王国騎士団に入る道もあるよ? よかったら僕と同じ騎士団に」  ジャックの突然の声掛けに、ボーマがカエデの肩を両手で掴む。 「おぉっと、残念ながらカエデちゃんは次期騎士団『盾』の候補として挙がっているのだ。だははははは!」  2人の何気ないやり取りにカエデは苦笑いで返すと、彼女は1人見えない天井を見上げた。
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