第四章

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「もう半袖も着れそうもないな」タイサは鼻で笑う。 「そう思って、一応長袖も用意してあります。しばらくは鎧を着るので大丈夫だと思いますが、寝間着には必要でしょう?」  エコーは両手を合わせると、ソファーの近くにあった荷物の束から長袖を取り出してわざわざタイサに見えるように広げて見せた。 「さすがは副長だ。用意が良い」 「ありがとうございます。できれば『俺の』をつけてくれると、もれなくお菓子が付きますが?」  エコーが広げた長袖を背中に隠すように手を組むと、笑顔でタイサの顔を覗く。  タイサは口を尖らせたまま左右に動かすと、視線をずらしながらコーヒーを再び手に取った。 「欲しくありませんか? お菓子」  まるで水溜りを避けるようにエコーが左右に跳びながらタイサに近付き、意地の悪い笑みの顔をさらに近づけた。 「………まぁ、欲しいな」タイサの視線がエコーの瞳と合う。 「じゃぁ、言ってください。はい、3、2、1!」  エコーが指を立てる。 「さ、さすがは………俺の女だ」  タイサは口を小さく開けた。 「ぶー。駄目です5点です」  エコーはすぐさま不機嫌になって頬を膨らませて顔を遠ざけると、腰に手を置く。 「何で俺の『女』になってるんですか?」 「え、あ、いや………そっちの方が副長よりも格上かなと思ったんだが」  予想外にダメ出しをされたタイサが目を大きくして首を傾げる。 「時と場合によります。もっと劇的な状況であれば有効ですが、ここでは『俺の副長』の方が特別感が強いですね」 「………全く分からん」  この集落に来てからというものの、エコーはタイサと2人きりになると大胆な発言や行動が目立った。相変わらず奥手で鈍感なタイサは常にエコーから責められる側で、しかしまんざらでもない顔立ちで毎日を過ごしていた。 「はい、言い直してください。3、2、1」 「ああ、さすがは俺の副長だ。いつもありがとう」  気押されたタイサの声は、やや棒読みであった。
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