第四章

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 そして自分の手の平に拳を当てて音を洞窟内に響かせた。 「俺はあいつの剣で盾だ。難しく考える必要はねぇ。ああ、それだけでいいんだよ」 「どう見ても、司令官の方が強いと思うんだが………あてっ」  フォルカルの額に小麦程の小石が当たる。 「細けぇことはいいんだよ! フォルカル」 「ソウダナ。ソレコソ、アモンダ」「………褒められた気がしねぇ」  アモンの頬が緩むと、バルバトスがすれ違うように歩き始めた。 「おい、今時どこ行くんだよ」と、アモン。 「シレイカンニ、コエヲカケテクル」  バルバトスが片手を上げると、顔の横で止めて2人に挨拶する。 「はぁ!? お前、さっき『そっとしてやれ』って」 「ソレヲイッタノハ、フォルカルダ。ワタシハ、ワタシノヤリカタデ、ドリョクシヨウ」  バルバトスが堂々と歩き始める。 「おめぇ、汚ねぇぞ!」  アモンがバルバトスを指さし、大きく口を開けて非難した。 「やっぱり、決戦前の一声って大切かもしれないな」  フォルカルも口に手を当てて笑いを誤魔化し、バルバトスとは反対側からアモンの横を通り過ぎる。 「いやいや、それは………それはよぉ、おいって! それはねぇってよ!」  怒りと呆れ、そして苦し紛れに笑うしかないアモンが顔の前で手を左右に振って2人の行動を諫める。  そしてバルバトスとフォルカルが同時に足を止めて振り返る。 「それじゃぁ、アモンも来るかい?」  フォルカルが上から手で招くような仕草をアモンに見せつける。 「分かった! 分かぁぁったよ。行けばいいんだろう? 行けばよぉ」  やけ気味になったアモンが足を大きく、街の不良のように故意に広げながら踏み出し、力強く先頭を歩き始めた。 「ソレコソ、アモンダ」  表情のないバルバトスの顔の一部が窪んだように影をつける。
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