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「ここさ、やっぱ電荷あってない気ィすんだけど…」
眉根を寄せて、彼が呟いた。
まだ圭一郎のレポートチェックを続けていたようだ。本人はすっかり忘れていたので、もぞもぞと頭を起こすと、彼はタブレットの電卓アプリで検算をしていた。
鋭く引き締まった顔はマウンドに居るときに似て、切れ長の目は酷薄にさえ見えた。
…相棒は、投球時に人が変わる。
普段は温和でおしゃべり好きで、多少おっちょこちょいな少年だが、ひとたびマウンドに立つとまるで別人になる。ベンチから見守る圭一郎からして、彼が味方の失策に目を眇めるのが見えると、野手陣に本気で同情した。
獰猛で、
高慢で、
残酷な。
しかし強く、美しい、エース。
おそらく、そちらが彼の本質なのだ。圭一郎は勘付いている。
ただ、普段とはまったく違うその姿が、チームを強力に牽引した。彼のワインドアップに合わせて高揚するダイヤモンドの空気に、ベンチの圭一郎でさえ心が躍った。
だからこそ、
どうしても、負けたくなかった。
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