王はもういない

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王はもういない

「何故だ⁈何故敵は攻撃をやめないのだ⁈もはや我々の王は居ないというのに…。王なき今もまだ物足りぬというのか…!」参謀は歯を食いしばり、込み上げてくる怒りと攻撃にに必死で耐えていた。 「もはや主君のいない我々に敵は一体何を望んでいるのだ⁈ジワリジワリと進軍して、まるで我々をいたぶり、遊んでいるかのようだ…。にこんな数になるまで我々を追い詰め、正気とは思えん。」軍長も疲れ切っていた。参謀と共に必死に戦い、王を守ってきていたが、数分前に王を討ち取られた時にもう勝負は付いたにもかかわらず、まだ敵は攻め続けていたのだった。本来ならばこんな戦況はあり得ないことなのだ。 「クソッ、また敵兵が進軍して来た…!いいか、生き残った者達よ!自身の身は自分で守れ!王なき今、もはや自分の身のことを第一に考えて行動するのだ!」敵軍は相変わらずじわりじわりと王なき彼らに迫って来ていた。それは決して猛攻では無く、ゆっくりと進撃して来ているのだった。 「参謀!とうとう最後の桂隊もやられました!しかし、敵はまだ攻撃の手をゆるめようとはしていません!」 「くそ、桂隊までもか…。これで我が軍は我々二人と歩兵隊が四人残っているだけだ…。」六つ残っただけの駒は無慈悲なまでにルールの枠を超えた現状の戦局に耐え忍ぶ他ないのだった。それでもそれでも続く親子の対局には確かな意味が存在する事などこの駒たちは知る由もないのだ。 「ねぇ、まだ続けるの?」 「まだだもん!まだ負けて無いもん!王将は取られたけど負けじゃ無いもん!」 「ハイハイ、じゃあもう少しだけよ。」
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