彼と私の6cm

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********** 「ただいま」 家に帰るなり、玄関で出迎えてくれた母親が怪訝(けげん)そうに眉根を寄せた。 「傘、持ってなかったん?」 「……ほっといて」 なにそれ、と憤慨(ふんがい)する母の声を背中で聞きながら、一椛(いちか)は階段を上って、自室にひきこもった。 姿見(すがたみ)に映った自分の姿に、一椛は苦笑いを浮かべた。左肩側だけグッショリと濡れている。 せっかく一緒に帰ってこれたのに。 ポツリとつぶやいて、濡れた肩に触れる。途端に、抱き寄せられた瞬間を思い出して、鼓動が早くなった。 顔が、熱い。 思い出しただけで、こんなにもドキドキさせられる。一椛はブラウスとスカートを脱ぎ捨てて、ベッドに倒れこんだ。
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