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「ただいま」
家に帰るなり、玄関で出迎えてくれた母親が怪訝そうに眉根を寄せた。
「傘、持ってなかったん?」
「……ほっといて」
なにそれ、と憤慨する母の声を背中で聞きながら、一椛は階段を上って、自室にひきこもった。
姿見に映った自分の姿に、一椛は苦笑いを浮かべた。左肩側だけグッショリと濡れている。
せっかく一緒に帰ってこれたのに。
ポツリとつぶやいて、濡れた肩に触れる。途端に、抱き寄せられた瞬間を思い出して、鼓動が早くなった。
顔が、熱い。
思い出しただけで、こんなにもドキドキさせられる。一椛はブラウスとスカートを脱ぎ捨てて、ベッドに倒れこんだ。
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