彼と私の6cm

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********** いつの間にか完全に寝入ってしまっていた。 激しい雨脚(あまあし)が窓を叩く音に意識を浮上させると、あたりは真っ暗だった。 いま、何時やろ……。 スマホを確認しようと手を伸ばしたとき、ふと前の席にだれかが座っていることに気づいた。 「やっと起きたか」 やや低めの声。一椛(いちか)の心臓が跳ねた。目をつむっていても、聞き間違えることはない。 「颯真(そうま)……」 とろんとした目で、甘えるよう名を呼べば、彼の頬に朱色(しゅいろ)が走る。 「おせーよ」 そう言って、目を逸らす。胸がキュッと締めつけられた。 「……ごめん」 反射的に謝って、一椛はうつむく。彼と会えた喜びと、素っ気ない態度への悲しさで、頭の中が混乱していた。 「いや、そういうわけやなくて……」 なぜか颯真もひどく焦っている。彼はわずかに逡巡(しゅんじゅん)した後、ガシガシと頭を()いてため息をついた。 「……家、帰ろや」
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