彼と私の6cm

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シンプルな誘い文句に、一椛(いちか)は頬を上気させ大きくうなずいた。一緒に下校するなんて、小学校の集団下校以来ではないだろうか。 隣家といえど、朝練・夕練がデフォルトの颯真(そうま)と時間が合うことは皆無(かいむ)に等しい。年齢という壁以外に、サッカーという障害が立ちはだかっていた。 「お前の帰りが遅いって、うちのオカン経由で、連れて帰れコールがきた」 ずいっとLINEのトーク画面を見せられて、一椛はコクコクとうなずいた。 ──お母さん、ナイス。 雨が降ったから颯真の姿が見えないと(なげ)いていたはずなのに、そのおかげで一緒に帰ることになるとは、なんという幸運だろう。 雨脚(あまあし)は衰える気配は見せないが、彼といられるなら、それは些細(ささい)な問題だと一椛は思った。 「日誌、先生に渡してくるから、玄関で待ってて!」 ちゃんと待っててね、と念押しをして、彼女は教室を後にした。うれしくて足が地面についていないような気がした。
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