彼と私の6cm

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職員室は教室がある校舎とは別棟の二階にあり、渡り廊下でつながっている。雨に濡れて滑りやすくなった廊下を駆け抜けて、一椛(いちか)は投げ込むように日誌を提出する。 担任がなにか言いたそうな様子だったが、「失礼します」と(さえぎ)って、颯真(そうま)が待つ玄関に向かって、一目散(いちもくさん)に駆け出す。 玄関は職員室のすぐ下で、階段を降りれば目の前だ。“廊下を走るな”という張り紙の前をなんとなく早歩きして、階段を下る。 「颯真ッ!」 と名を呼べば、だれかが一緒にいることに気づき、慌てて“先輩”とつけ足す。 「一椛ちゃんやっけ?」 ご機嫌な様子で手を振るのは、颯真のクラスメイトの三井(みつい)拓海(たくみ)先輩。確か、弓道部だったはずだ。 「こ、こんにちは」 そう言って一椛が頭を下げれば、彼もつられたようにお辞儀をした。 「……拓海、ソレ持って、さっさと帰れ」 腕組みをした颯真が、ぶっきらぼうに言い捨てれば、「わかっとおって」と苦笑する三井。
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