彼と私の6cm

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「ほな、また明日」と言って、三井は傘を持って出ていく。止む気配のない雨がザーッと地面を叩きつけていた。 「えっと……待たせて、ごめん」 一椛(いちか)はそう言ってスニーカーに履き替えると、立ててあった傘を(つか)んで颯真(そうま)の隣に並んだ。 「帰ろ」 傘を開けば、その内側に描かれた白い雲のイラストが広がる。雨の日でも青空が見えるというデザインが一椛は大変気に入っていた。 練習中の颯真を見ることができなかった日も、この傘をさして歩けば、なんとなく気持ちが軽くなるのだ。 でも、今日は颯真と一緒に帰れるんや。 うれしくて、思わずにやけそうになる。雨はきらいだけど、今日だけは好きになれそうだ。 そんなことを考えながら、ピロティから一歩踏み出そうとした矢先、ヒョイと傘の手元を奪われる。 「入れて」 驚いて顔を上げれば、頭ひとつ高い場所で颯真が苦笑を浮かべていた。 「オレの傘、三井に貸してん」 はにかんだ笑顔に、キュンとした。
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