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「おはようございます」
「おはよ」
仄かに日光が入り込むレジカウンター。今日もそこにはタカナシさんが座っている。繰り返しの様でいつもと変わらない、その穏やかな(悪くいうならば閑散とした)店内には些細な変化が見られた。レジカウンターの上にはいつもは居ない一対の鴉がちょこんと配置されていた。
「それ。今度はなんですか?」
「あぁ、フギンとムギン」
残念ながら名前を言われても一向にピンとこない。何かのキャラクターだろうか。小さな濡羽色のそれをじっと見ていると少し焦燥に駆られるような気持ちになる。ただ、それだけだ。何か思い当たるような事もなく、そのまま首を傾げた。
「鴉と言えば導きの象徴ですよね」
相槌にもならないような言葉を返しながら私は制服を上から羽織る。振り返るとそこには大きな鴉が座っていた。それは大きなクッション程度の大きさである。無論そこには三本の足を携えていた。
「や、八咫烏ですか?」
「八咫は怖いから四咫ぐらいかな」
そう言われても良く分からない。yottaと言われるとソッチのほうが大きい気がしてしまうのだが。相変わらずタカナシさんは良く分からない。もしかしたらタカナシさんは十進法を採用していないのかもしれない。時間というのは12進法で有るからしてこの場合問題にならない。
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