プロローグ

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プロローグ

 ひとりで星空を見ている時に、急に切なさに打ちひしがれて、寂しくなって、泣きたくなることはないだろうか?  全てを忘れて、目の前に広がる黒い海原のどこかへ消えてしまいたい。  でも、無性に会いたくなる。  声が聞きたい人が夜空に浮かんで、行き場のない想いが溢れ出す。  きっと、星空症候群を発症する人は少なくないはずだ。  ーー僕も、そのひとりだから。  知らない影に振り向いては、あるはずのない君の気配を探して、鮮やかな都会の街に溺れていく。  白い吐息が、ひとりきりの空を枯らしても、ただひたすらに暗く、深く、僕らは歩き続けている。
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