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その後は、しばらく歩いたところにある『Blue & Lion』というカフェへ入った。
店内はブルーとゴールドで統一されていて、アンティークな雰囲気を醸し出している。
シャンデリアや大きな鏡、青い薔薇のドライフラワーが飾られていたりと、まるでおとぎ話の世界にいるようだ。
もちろん店員には僕しか見えていないため、出された氷水はひとつ。
それでも、落ち着きのある店内をとても気に入った様子で、小夜はオススメのケーキとカフェラテを選んだ。
〝三月の白雪姫〟や〝星空の口付け〟など、この店のデザートには変わった商品名が付けられていて、メニューを見るだけでも不思議な気分になる。
僕が感じるのだから、女の人は尚さら好ましいだろう。
「理人って、女の子が喜びそうな場所よく知ってるんだね。ケーキのネーミングも好み過ぎて感動しちゃった」
「それは、よかった。高校の近くだし、一応調べたんですよ」
「大満足! ありがとね」
ブルーとピンク、ホワイトの生クリームが疎らに装飾された小ぶりの丸ケーキが運ばれてきた。
紫の小さな花とベリーが飾られ、金箔が散りばめられている。
『絶望と希望に咲く花』という名も、とても繊細に映った。
「ねっ、写メ撮ってよ」
ケーキの皿を軽く持ち上げて、小夜が少し前のめりになる。
「……なんのために?」
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