1 隣の芝生は青く見える

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キラキラした瞳で木下さんが見てくるもんだから、つい後ずさりしてしまう。眩しいのは嫌いだ。 同僚の期待を裏切るのは面目ないが、かぶりを振る。全ては水樹(アイツ)が悪い。 「あー、いやいや。誰に聞いたのかは知りませんけど、俺そんなことないですよ。期待してるとこ悪いんですけどね……。はは」 「え、でも花苗(はなのえ)さんと付き合ってらっしゃいましたよね。『うちの彼氏元カノいっぱいいるんだよねー』って話してました」 それももう藍美(元カノ)なんだが。 こんなとこまで話ししてたのか、俺のこと。 ビールを一口で飲み干した後、多分俺は勢い余ったのか、珍しく酔っていたのかしていたのだろう。 普段はこんなこと、口を滑らしたりしないのだけれど。 「…いや、俺も、木村さんと同じで振られたんです」 「—————へ?」 絶対に、いつもの自分ならこんなこと、打ち明けたりしない。 ただ多分今日は、疲れたんだ。 「———愛せないんです、人を」 脳裏に映る藍美の姿は、泣いていた。
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