赤い傘とレインコート

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赤い傘とレインコート

あの日君は、寂しそうに笑って 「いつかまた会えるよ」 と言った。雨の日の夜の交差点で、必ず思い出してしまうあの笑顔と赤い信号。あの時の君は、赤い傘を片手に赤いレインコートを着ていた。梅雨だというのに、ずっと雨なんか降っていなかったのにね。俯いたまま前を向き直した。そして、信号が青に変わった。僕は、向こう側へ歩いて言った君をじっと見つめていた。雨が突然、降り出した。信号機が赤になると同時に赤い傘が開き、君はどんどん小さくなった。傘とレインコートがひとつの赤い点になるまで、ずっと見送ったことを忘れはしない。だから梅雨になると、赤い傘とレインコートを見る度に君かと思って車を停めてしまう。「そうだったね。」もう会いたくても君はいなんだった。でも、あの言葉を信じて僕はまた、車を停める。テールランプの赤と信号の赤に照らされた赤い傘とレインコートの後ろ姿を見ると。
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