嘘の始まり

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「そうなんです。でも課長のおかげで助かりました」 「もしまた何かあったら言えよ」 「はい」 課長に嘘をついてしまった罪悪感に苛まれながら、結局危ないからと自宅のドアの前まで送ってもらうはめになった。 ただ貴稔と一対一で会っていたら、どうなっていたのか考えるとこれでよかったのかもしれないと思う。 貴稔が心にもなく謝ったら、『お前だけだ』みたいなことを言ったら、もしかしたら流されていたかもしれない。 もう会わないと決めていたとはいえ、ひとりで拒絶出来たかどうかは疑わしい。 たった1年の付き合いだけれど、多少の情もある。 だからちょっと貴稔には悪いことをしてしまったけれど、決着がついてよかった気がする。 後は必要以上に課長が心配しないでくれますように。 本当に私の言葉を信じていたように見えた。 明日念のために晴香先輩に相談しておこう。 .
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