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第二話 悩める
明日の朝には会えるのに・・。
瑛隼は暇な夜にやたらと電話やらLIMEをしてくる。
「なんで朝まで待てないんだろう・・」
私は一応瑛隼の彼女なので、そういう彼の行動を受け入れるしかないのだろうか。
「瑛隼に付き合おうと言われたとき、正直ムリに決まってると思ったんです」
バイト先の先輩、杉崎さんは手先を動かし続けたまま、マイナスからのスタートだったんだねと言った。
「はい。彼は大学で目立つ方なので、自分の手には負えないと思いました」
「岸田さんのそういう消極的なところが逆によかったのかもね」
何度もアプローチしてきた瑛隼は、中々落ちない私を面白がって、岸田さんしぶといね~と笑っていた。
「彼の周りの人たちが口をそろえていいヤツだと言うので、もったいぶるのはやめました」
先輩の杉崎さんは相変わらず作業に集中したまま、二人の関係をいつ公にしたの?と質問した。
「公言はしてません。瑛隼が面白がって怪しまれるまで黙っていようと言ったんです」
「へ~、たしかに、そういう秘密ってワクワクするかも」
けれどある日同じ大学の女の子たちにチヤホヤされている瑛隼に嫉妬しなかったのが原因で怒られてすぐにバレてしまった。
「ははは、そういう岸田さんを彼は好きになったんだから仕方ないね」
くすくす笑う先輩に、私は杉崎さんは彼女に嫉妬されたら嬉しく思いますか?と聞いた。
「逆に嫉妬してくれなかったら切なくない?」
私は少し考えて、恋愛関係ではない男の人との関係をもし問い詰められたりしたら面倒くさいなと思った。
「・・。たしかに」
少し間をおいて同意した私に、杉崎さんは吹き出してお得意の思ってもいない返しがきたねと言った。
「包み隠せてませんでした?」
全然と苦笑する杉崎さんの横顔を見ながら、自分をごまかすのはやめた方がいいのかもしれないなと感じた。
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