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「みっ……」
脱衣所へつながる扉を開けようと思った時、フワリとした何かが肩に引っかかる。
手で触れても、見ても、何もない。
だけど、1本の髪の毛が、肌に触れるような、くすぐったい不快感。
いつまでも纏わりつくそれを、手で払っても、体の別のどこかへ付いた。
まるで蜘蛛の糸。
「緋朝?開けていい?私に声をかけた?」
扉の向こう側から水夜の声がする。
「あぁ、今、おかしな事が」
ゆっくりと扉をあけた彼女が俺の姿を見たあと、ギョッと目を見開き、勢いよく中に入ってきた。
「ちょっと緋朝、あなたさっきより血が酷いわ。本当はどこかに傷でもあるんじゃない?」
「いや、違う」
俺は体に纏わりつく何かを払いながら、水夜にさっき、起こったことを話す。
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