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俺に捕まえられたままの水夜が、大人しく俺の胸に抱かれる。
「俺もだ。最初は驚いたけど、今は会えてホントに良かったと思っているよ。だからこそ、水夜が危険な目にあうのがイヤなんだよ。心配なの分かるだろ、友達なら」
友達なら……
俺は友達だと思ってないかも知れない。
もっとそれ以上に大切に感じてきているなんて、
……そうとは彼女に言えないけど。
まるで学生の時のように、気持ちをうまく伝えられないから、友達という言葉で誤魔化している。
逆に水夜は俺の事を本当に友達として好きなだけだと思う。
それが分かってるから、この変な感情を伝えるのも知られるのも、怖い。
こんなに大人になっても。
友達。
まぁ、それでいい。
「……緋朝、分かったわ。あなたも一緒に来て。だから、私の日記を読んでくれる?」
「うん」
「じゃ、離して」
再び俺の胸を押し返す水夜を、仕方なく離した。
何でこのまま良い雰囲気にさせてくれないのか。
悲しくなるわ。
「いつ行く?今から読もうか?どうせ寝れないし」
「……緋朝のペースでいいのよ。私はいつでも大丈夫。ちょっと、水を飲んでくるわ」
立ち上がり、部屋を出て行く彼女の背中を見送ると、移動させた荷物の中から日記を取り出した。
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