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ここまで読んで、一度、胸の上に日記を置いた。
ここの工場の中を歩かなきゃいけないんだな。
想像したら超怖ぇ。
水夜のやつ、ホントこんなとこ夜に行くとか、怖くないってとこが変。
「緋朝、あら、日記読んでたのね。どこまで読んだの?」
水夜が部屋に戻ってきて、ベッドに寝転がる俺を覗く。
「………夜に工場探索してて、トイレからもう一回、社長室に戻ろうとしてるとこだよ……」
「なぁに?何でそんな怒ってるの?」
「怒ってねぇ……」
ここで、怖いなんて言ったら「じゃあ、やめとけばいい」って言われるに決まってるし。
「じゃあ、一緒に読もうか」
そう言いながら、水夜は俺の横に寝転んだ。
彼女の方を向くと、こっちを見つめていて顔の近さに、ちょっとドキンとする。
「緋朝は怖いんでしょ?工場へ行くのが。大丈夫よ、私が守るから」
俺の、セリフ、じゃん!
それ、俺が言わなきゃダメなセリフ!
なに女に言わせてんだか。
「俺も、何かあれば水夜守るし」
と、言ったものの出た声は小さかった。
水夜が俺の顔をジッと見つめるから、俺は何となく目をそらす。
すると、胸に置いたままの日記を水夜が取り上げた。
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