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今度は私は迷わず口を開けて、その顔を吸い込む。
「たす…け…」
また、「助けて」。
よっぽど酷い死に方をしたのだろうか?
私は最後までその霊を吸い込む。
なかなか、金庫の壁に張り付いて吸い込めなかったけれど、時間をかけて何とか吸い込めた。
彼がもう助けてという事は無くなる。
勝手な解釈かも知れないけれど、良かったのかも知れない。
私はごくんと飲み込み口を閉じる。
しかし、何故彼を見ると死ぬのか。
分からないままだった。
そして、目の前の大きな金庫。
ダイヤルの暗証番号も分かるはずもなく、
それは鍵もかかっている。
開ける事ができず、私は家に戻る事にした。
「ここまでよ、この顔の話は」
水夜が日記の上に手を置いて俺を見た。
「なんで、こいつを見たら死ぬのかは分からなかったんだ?」
「そうなの。でも、緋朝が見た男と似ている気がしない?」
「……確かに……って、じゃあ俺死んじゃうってこと!?」
水夜が左右に首を振った。
「そんな事はさせないわ。それに、私はその男を食べたのよ。同じ人がまたいるなんて考えられない」
「……」
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