26/35
前へ
/360ページ
次へ
その時だった。 光で近くの壁がパッと明るくなり、そこに浮き上がる白い顔があった。 「うわっ」 目に瞳はなく、口は叫んでいるように不規則に動かし、外に出たいのか、踠き、ひたすら首をグイグイと回している。 水夜の館で見た、石膏男だ。 俺も急いで懐中電灯をつけて、石膏男を照らした。 「こいつだ!俺に血を吐いたヤツ!」 「でも、私が食べた男性じゃないわ。こんなに若くなかったもの。もっと歳を取っていたわ」 「えっ!?」 確かに蠢く顔は、シワやたるみもなく、若く見える。 見た目で判断するなら、俺と年齢が変わらないように感じた。 「どうするんだよっ!うわっ!」 突然、石膏男が「あ」だか「お」だか分からない声で、吠え始める。 そして、ボタボタと口から血の塊のような物を吐き出した。 辺りにビチャビチャと液体の飛び散る音がしたけれど、水夜は御構い無しに、その顔に近づいていく。 「っ!!おいっ!やめろ!」
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加