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「あのなあ、水夜…」
「なに?」
俺の心配をよそに、まだふくれっ面の顔のまま、こっちを見る。
「俺も心配だって言ったろ?何で無茶するんだ」
「だって……早く理由が分かれば、緋朝も危険も少なくなると思って」
口調は穏やかだけれど、俺が怒っているのが不満なのか、水夜は斜め下を見て、小首を傾げる。
何だよ、怒れないじゃんかよ。
そんな顔するの卑怯だぞ。
「俺の為を思っていてくれてるのは、嬉しいけど、でも!俺の心配も同じだというのを、理解してくれよ。な?」
「……分かったわ、ごめんなさい」
俺は軽く二度頷いた。が、その時、懐中電灯の光で、キラッと光る何かが目の端にはいった。
ちょうど石膏男が現れた場所だ。
「なんだ?」
俺は光を照らしながら、その光った物をしっかりと見ようした。
光の照らし具合によってキラキラ光るそれは、細い糸に見えた。
触れてみると、フワリとくっついてきて、蜘蛛の糸のような……
これは、館の風呂場で、纏わり付いたあの感じと似ている。
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