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「……こんなに糸に巻かれてる、あなたをエサにしようと思っているのかしら……」
「……」
彼女の瞳が心配そうにユルユルと揺れている。
そう、ホント言うと、もうここでやめたっていい。
だけど……そういう訳にはいかない。
何か俺が関わる事で、やよいさんの時のように何かあるんだ。
そう思う。
……水夜だって、ここで諦めるとは思えないし。
ただ、俺を心配する顔が、俺の心を痛くした。
「さぁ、ある程度取れた。動ける?痛いところはない?」
「あぁ、動ける。ありがとう。痛いところもないよ」
彼女の口角が少しだけ上がる。
「なぁ、ライターか、何か持っていったらどうだろうか?もし、同じ目にあったら、糸を焼ききるんだ」
ライターじゃ手元が熱くなってしまうかも知れない。
そうだ、ディスポーザブルライター。
柄が長いライターよりつけやすいものだ。
「水夜、待ってろ。コンビニへ行ってチャッカマン買ってくる。」
「えっ!?暇朝?待っ…!」
彼女が何か言ってるのも聞かず、俺は館を飛びだすと狭い路地を抜け、近くのコンビニで2本チャッカマンを買った。
外はまだ暗い。
結構長い時間を過ごしていた気がしたが、まだ深夜だった。
やはり、工場とは時の流れが違う。
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