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「はぁ。」
俺は日記をテーブルに置き、交代でティーカップを手に取った。
今居るこの屋敷の事も、水夜自身の不思議な事も俺が体験している事だと言えばそうだけど、
まだなんかよく、分からないし、色々と信じられない。
それを見透かしたように彼女は、また口角を少し緩めて微笑む。
「大丈夫よ、すぐに自分が今まで体験したことの無い信用できない事だって、そういう世界もあるって理解できるようになるわ。」
「……」
俺は黙ったまま、紅茶を飲み続けた。
何が理解できるのか、ということも理解できなかったし。
「ご馳走さまでした。あの、今日は帰ります……」
「あら、そう。じゃあ、このお菓子お土産に持って帰って?包んであげるわ」
「いや、そんな……お気を使わず」
「急に丁寧になったわね、どうしたの?」
水夜は、お皿に敷いてある紙ナプキンを持ち上げ、お菓子をそのまま紙ナプキンの中に包む。
俺はその様子を見ながら、ボソボソと呟いた。
「だって、俺よりも年上って事だし……じゃなくて、ですし」
「ウフフ、そういうところは信じてくれているのかしら?いいわよ、今まで通りで。何も気にしないわ。ちょっと待って。お菓子を入れる袋を取ってくるわ」
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