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「緋朝、おかえりなさい。」 「うん、ただいま。何もなかった?」 「えぇ、特に何も。何か飲み物でも飲む?急に走って行ったから驚いたわ」 俺はテーブルの上にコンビニの袋を置いた。 「次、また糸に巻かれたら、これで燃やすんだ」 「燃やす…火傷、しないかしら?」 「何かの本で読んだ事がある。蜘蛛の糸は燃える事はなくて、熱で切れるって。大丈夫じゃないかな」 水夜がコンビニの袋を開けて、チャッカマンを取り出す。 「……これなら、ここにもあったのに」 「えぇ!?水夜、いつもマッチ使ってるじゃん!」 「マッチの方がなんとなく好きなのよ」 俺はため息をついた。 何だ買いに行かなくても良かった。 ……まぁ、いいけどさ。 水夜が普段使ってないとしたら、ちゃんと使用できるか分かんないし。 「もう、あっちで使えそうな物はないかしら?」 正直、わからない。 あのまっすぐな廊下の、ほんの数十メートル先なのに、なかなかたどり着けない。
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