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その棚の隙間の向こうは、俺たちがいる社長室より暗い。
月明かりも届かない、闇だ。
棚の隙間には蜘蛛の巣が張ってあり、俺はチャッカマンのスイッチを入れて、糸を焼き切った。
「よし、入ろう」
その時だった。
廊下で見た、石膏男が棚の壁からグニャグニャと出てきたのだ。
「うわっ…!」
今度は石膏っぽくはなく、まるで書類の顔にペイントしたかのように、バインダーや紙の束が顔の形になっている。
「うぁ、ああぁ……うおぉぉお…」
呻きながら、顔を伸ばして出てくる男に懐中電灯を当てた。
さっきも思ったけれど…コイツ、やっぱり苦しんでいるように見えなくもない。
何かに怯え、叫び。
口からピタピタと何かを垂らした。
その音は、かなり気持ち悪くてゾクッと背中に冷たい汗が流れる。
水夜は落ち着いた様子で、少し離れた所から男の顔を観察し、男の周りに張り巡らされている、蜘蛛の糸をチャッカマンで焼いた。
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