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懐中電灯で暗闇の中を照らすと、壁側にずらりと、小さなプラスチックの水槽が沢山積み重ねてあり、中には藁クズのようなものが適度に入っていて、生き物を飼っていたような痕跡が残っている。
近づいてみると。
水槽の中には、日記に書いてあったとおり、蜘蛛が大量に死んでいた。
長い足を上に向け、動かない。
それがまだ、形として残っている死骸もあったけれど、パラパラになって崩れているものも多数あった。
大きい蜘蛛や小さい蜘蛛……
珍しい蜘蛛を集めていたのだろうか?
壁一面に蜘蛛の死骸あると思うと気持ちが悪い。
「緋朝、見て」
水夜の声の方を見る。
大きな金庫。
これも日記に書かれていたヤツだ。
ダイヤル式の物で、その横に、鍵穴とレバーハンドルが付いている。
懐中電灯の灯りを動かすと、その金庫の上の天井の隅に、暗い部屋が真っ白になる程の霧が広がっている。
……違う、蜘蛛の巣だ。
いや、蜘蛛の巣と言うより、まるで蟷螂の卵のように固まって見えた。
そして、その塊の隙間からダランとぶら下がるモノ。
石膏男の時とは違う悪寒が、俺の背中を走った。
「……っ!あれ…」
あれは本物の人間の腕だ。
塊からはみ出ている腕は、老人のようにカサカサでシワシワ。垂れ下がった指先の爪は真っ黒に色が変わり、まるでミイラのようだ。
親指と中指に太い銀の指輪がついている。
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