190人が本棚に入れています
本棚に追加
/360ページ
糸を炙り続けて数分。
死体の重みに耐え切れなくなった糸が自ら切れて、繭のような物体が床へ落ちた。
いきなり大きな音を立てて、落ちたから思わず「うわっ!」と大声を出した俺。
水夜は落ちる瞬間、無言で後ろへ下がった。
落ちた衝撃で、繭からはみ出ていた腕の先、
ようするに、ミイラの手首が折れた。
取れる事は無かったが、変な風に折れ曲がり、指の部分はまるで使い古した箒の先のように、ひしゃげてしまった。
まぁ、死んでいるので、骨折したところで、悲鳴は聞こえない訳だが、多少は俺らのせいでごめん、と思う。
水夜は死体に近付くと、上手に繭状になった糸をあぶって殻を剥くように開けていく。
それを見た俺も急いで足元からジワジワとチャッカマンに火をつけた。
しばらくすると、ゆっくりと中から遺体が出てくる。
ーー赤い袖のスカジャンに、太い金のネックレス。ところどころ破けたダメージジーンズ。
そして、金髪に近い、明るい茶髪が残っているが、ほとんどは粘着力のある繭の糸の内側に持っていかれて抜けた。
……まぁ、若い男だとわかる。
魚の干物のようになった男は、絶対とは言えないけれど、あの石膏男…だと思った。
「石膏男、じゃないか?これ」
「……私もそう思う」
最初のコメントを投稿しよう!