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「コイツ、何者だよ……」
「分からない。持ち物は無いかしら?」
そう言いながら、水夜はミイラをゆっくりと裏返した。
勿論俺も手伝うが、服越しに伝わる変な感触と、ナマの人間とは違う重さに、指先からゾワゾワするものが体に走る。
「ねぇ、見て」
ミイラのジーンズに、二つ折りの財布。
俺は指の先で財布を摘むと少しずつ引っ張りだした。
2人で懐中電灯の明かりで財布の中を調べる。
今のデザインとは違う、一万円札が数枚。
昔の札だ。
それから、免許証……
そこには、杉村 龍太郎 と書かれていて、目つきが鋭く頬骨の高い痩せた男が写っていた。
やはり、そうだ。
石膏男と同じ顔。
「やっぱり、コイツ石膏おと、」
「緋朝、うしろ!」
水夜が俺の腕を引っ張るのが一瞬遅かった。
石膏男が壁からグニャリと出てきて、俺をの服を後ろから掴み、壁の中に引きずり込んだ。
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