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壁の内側と思われる場所は、やけに広い。
まるで宇宙に居るみたいで、地平線すらない。
ただ、灯りが無くとも周りは見渡せる。
そんな所に、俺と石膏男はいた。
いや、
今は" 石膏男 "と呼ぶのはおかしいかも。
免許証通りの男は、石膏でも、ミイラでもなく、俺と同じように動いているからだ。
そいつは俺の後ろから前へ回り込む。
「杉村……?」
俺が男の名前を聞いてみると、パッと顔を明るくさせる。
「俺の事、知ってるのか!?俺はお前の事誰か知らないけどよ、助けてくれ!」
杉村は俺の肩を両手で掴んで、揺さぶる。
「助けてくれって、どういう事だよ?むしろ、俺を襲ったんじゃ?」
「違う!早くしないと蜘蛛に食べられちまう!その前にここから助けてくれ!」
「ちょ、ちょっと待て!説明しろ」
杉村は、俺が話を理解出来ないのが、もどかしいようで自分の親指の爪を噛んだ。
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